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ブランドサイトの役割が変わってきている?ソーシャルメディア時代の「あるべき姿」とは
ブランドサイトの役割が変わってきている?ソーシャルメディア時代の「あるべき姿」とは
かつては商品認知や理解、購入の大きな役割を占めていたブランドサイト。ところが近年、ソーシャルメディアの台頭により、消費者による情報収集の形が変わりつつあります。
ブランドサイトの「あるべき姿」とは。メタフェイズが、さまざまなブランドサイトの運用やキャンペーンのお手伝いをさせていただいている常盤薬品工業株式会社の広報宣伝部・成冨亮様に、現在のデジタルマーケティングの現場について、お話を伺いました。
多岐にわたるブランドサイト運営のため、トレンドにもアンテナを張る
折本(メタフェイズ):まずは、常盤薬品工業様が運営するオウンドメディアの概要について伺えますでしょうか。
成冨(常盤薬品工業):弊社では、コーポレートサイトの他、ブランドサイトが20サイト以上あります。食品や医薬品、化粧品など、ブランドが多岐にわたっているのが特徴です。このうち、メイクアップブランドの「excel」はECサイトを兼ねていますが、そのほかは基本的にブランディングを目的としています。加えて、TwitterやInstagramなど、ソーシャルメディアの公式アカウントからの発信も行っています。
折本:各ブランドサイトの役割は、商材によって異なるのでしょうか。
成冨:商品や価格帯も違えば、ターゲットも異なりますので、やはりそれぞれのサイトが持つ役割も変わってきます。例えば、「なめらか本舗」や「excel」のような化粧品は口コミサイトやソーシャルメディアで評判を調べてから、ブランドサイトにたどり着く方が多く、商品情報を確認する目的がほとんどです。また、「NOV」は、お客様の悩みに寄り添うブランドですので、安心で安全な商品かを判断するためにブランドサイトを参照される機会が多いと思います。
折本:サイトを管理する体制はどのようになさっていますか?ブランドごとに目的やゴールが異なるということは、ブランドごとに担当を分けられているのでしょうか。
成冨:主力ブランドについては、ブランドごとにプロモーション担当を立てています。大小を含めると20ブランド以上ありますので、小さなブランドについてはある程度まとめていますね。プロモーション担当はサイト制作をはじめ、デジタルからオフラインまで全てのプロモーションを担当していますので、ブランドの在り方を熟知して進めています。
折本:ソーシャルメディアをはじめ、新たなメディアやテクノロジーが登場するなど、ここ数年でデジタルマーケティングの施策は目まぐるしく変わっていますよね。デジタルマーケティングの部分をアウトソースするにあたり、「自分たちでノウハウを持っている必要はない」と割り切る企業もいれば、「社内にも詳しい人間が必要だ」とトレンドを追う企業もいます。御社としてはどのように考えられていますか?
成冨:まったく知らなくてもいい、とは思っていないですね。テクノロジーのトレンドをしっかり押さえることは、施策を考える上で引き出しを増やすことにもつながりますし。ただ、必ずしも100%自分たちで追いかける必要はないと考えています。アウトソース先の代理店様や制作会社様から提案をいただいたり、媒体社と直接お話ししたりして、情報を取捨選択しています。
大切なのは提案の良し悪しを判断するための体感値を自分自身の中で持つことではないかと思います。
ソーシャルメディアの台頭でブランドサイトの役割は変わってきている
折本:ブランドサイトの運営では、どのような点に課題を感じられていますか?
成冨:ソーシャルメディアが発達した今、改めて「ブランドサイトはどうあるべきか」を考えなければならないと思っています。お客様の情報収集の仕方が変わり、ブランドサイト自体の在り方も見直すべきではと感じているんです。プチプラと呼ばれる安価なコスメでいえば、以前はポータルサイトで検索して、口コミサイトで評判を確認し、企業のブランドサイトを複数比較して...という一連の流れがありました。今は、TwitterやInstagramで検索し、実際に使っている人たちのコメントを見て即購入する、という形に変わってきています。かつて、商品を訴求するツールだったブランドサイトは、もはや「最後の確認」程度の使われ方しかされていない。
折本:失礼な言い方になるかもしれませんが、ブランドサイト自体の価値が相対的に下がってきているのではと...?
成冨:そうですね。例えば、昨年ブランドサイトをリニューアルした「眠眠打破」は、リニューアル前後でブランドサイトへの流入がほとんど変わっていません。眠眠打破は公式Twitterの運用もしているんですが、ツイートがバズっても流入に影響しないんです。
折本:Twitterからブランドサイトへ流入していないんですね。傾向として、ブランドサイトへの流入数が下がってきているのでしょうか?
成冨:いえ、下がることもないし、大きく跳ねることもない。一定していますね。これはそもそも、眠眠打破が広く認知されているからかもしれません。「眠気を感じたら飲む」という目的が明確で、口コミなどの影響を受けにくい商品ですから。
その一方で「NOV」のようにメーカーからの情報が必要とされるブランドもあります。
まとめると、化粧品、食品、医薬品。それぞれターゲットも異なれば、ブランドサイトの使われ方も異なります。多岐にわたるブランドを扱う弊社としては、今の時代にブランドサイトとはどうあるべきだろう...と考えてしまうんですね。
折本:我々も、ここ10年で見ると「ウェブサイトを作ってください」というオーダーは減っているんです。デジタルマーケティングにかける企業予算は右肩上がりではありますが、我々、ウェブサイトの制作をしている企業の体感としては増えてはいない、あるいは少し縮小しているのではという印象があります。
サイト制作以外も、コンテンツマーケティングやソーシャルメディアマーケティングなど、目を向けるべき施策が増えてきたことで、サイト制作に割く予算も減っているのではないでしょうか。
成冨:確かに、ソーシャルメディア関連の予算は増えていますね。ちょっと前なら、ポータルサイトや影響力のあるサイトにバナー広告を出したり、DSPに出稿したりもしましたが、今はほとんどやっていません。ただし、それによってサイト制作の予算を減らしているというわけではありません。予算配分でみれば縮小が顕著なのはマス広告の分野かもしれません。
情報収集の手段が変化するなかで、ブランドサイトが持つ価値を常に問い続けること
成冨:眠眠打破はこれまでソーシャルメディアを使ったキャンペーンの際にLP(ランディングページ)を制作していましたが、今期はTwitterの中だけで完結するキャンペーンにしました。サイト制作からソーシャルメディアに方向転換したわけですが、それでもキャンペーンへの参加数では一定の成果が出たんです。これまでの「キャンペーン=LP制作」という固定観念から自由になって、ユーザーの行動に沿った施策を丁寧に考えるようになりました。
折本:眠眠打破のLPの例は、わたしたちWeb制作会社としても、認識を改めなければならない話ですね。成果を期待されているお客様に、安易に「サイトを作りましょう」と提案することは、本質をとらえていない可能性がある。予算すべてを使ってリッチなサイトを作るか、サイト制作費を抑えて、残りの予算を別の施策に回すか。お客様のゴールに合わせて、施策を見極めていく必要がある。
成冨:その点でいうと、まだ弊社は模索している最中ですね。オウンドメディア施策の比率を下げて、外部への出稿に軸足を移すという考え方もありますし、この時代に合わせたブランドサイトの在り方はどういうものだろうかという思いもある。ブランドごとに最適な解も異なるでしょうし、3年後には、また社会環境は変わっているのかもしれない。これこそ、制作会社の方々といっしょに考えていきたいところでもあります。
折本:提案側としては、ますます消費者の行動を肌感覚で理解しなければと思っています。以前、若者向けのプロモーションでハッシュタグを作る必要があったんです。Instagramのコメントをつぶさに観察して、語尾や絵文字などの傾向を把握して、いざ10代女子にレビューしたら「こんなの使わない」「超寒い」と全否定されて...。
成冨:こちらはロジックで理解しようとしますけど、現役で使われている方々は「感覚」でハッシュタグを作っていますからね。
折本:データ分析や行動観察などのマーケティング手法はとるにしても、実際のユーザーの気持ちをトレースするのはなかなか難しいのだなと実感しました。
成冨:若者にとってSNS上での検索は「みんながどう思っているか」と調べるのではなく、「やっぱりそうなんだ」と安心する作業なのかもしれない。情報過多の時代だからこそ、情報をかき集めるのに疲れてしまうというか。
いかに今の時代に適応していくか、ということが大切ですね。ソーシャルメディアとブランドサイトの両輪が回せるように、これからの在り方を模索していければと思います。
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成冨 亮さま
常盤薬品工業株式会社 広報宣伝部
折本 裕司
株式会社メタフェイズ 取締役
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